従業員の衛生管理を徹底するには?基本的な手洗いや健康管理のポイント
飲食店を運営する上で、食品の安全性を確保することは何よりも重要です。その中でも、店舗で働く従業員一人ひとりの衛生管理は、食中毒の発生リスクを低減し、お客様に安全な食品を提供する上での基本中の基本と言えます。特に複数店舗を管轄するエリアマネージャー様においては、各店舗の従業員に食品安全意識を浸透させ、衛生管理レベルを均一に保つことが大きな課題となるのではないでしょうか。
この記事では、飲食店における従業員の衛生管理を徹底するための具体的な方法について、Q&A形式で詳しく解説いたします。日々の業務における基本的な手洗いから健康管理、適切な身だしなみに至るまで、現場での指導や教育に役立つ実践的な情報を提供します。
Q: 飲食店における従業員の衛生管理を徹底するには、具体的にどのような点に注意し、指導すればよいですか?
A: 従業員の衛生管理は、食中毒予防の要であり、店舗の信頼を維持する上で不可欠です。基本的な「手洗い」「健康管理」「身だしなみ」の3つの柱を徹底し、継続的な教育とチェック体制を構築することが重要です。
以下に、それぞれの具体的なポイントを解説いたします。
1. 基本中の基本:徹底した手洗い
手洗いは、食中毒の原因菌やウイルスを物理的に除去する最も効果的な方法です。単に手を濡らすだけでなく、適切な方法とタイミングで実施することが求められます。
- 正しい手洗いの手順:
- まず、流水で両手を十分に濡らします。
- 石鹸を適量取り、手のひら、手の甲、指の間、指先、爪の間、手首まで念入りに洗います。特に、爪の周りや指のシワには菌が残りやすいため、ブラシを使用する、または両手をこすり合わせるようにして丁寧に洗うことが推奨されます。
- 十分に泡立てた状態で20秒以上かけて洗い、石鹸を十分に洗い流します。
- 清潔なペーパータオルやエアータオルで完全に水気を拭き取ります。共用のタオルは、かえって菌を拡散させるリスクがあるため、使用を避けてください。
- 必要に応じて、アルコール系消毒液をすり込み、乾燥させます。
- 手洗いが必要なタイミング:
- 調理作業の開始前、または食品に触れる前
- トイレを使用した後
- 生肉、魚、卵などを扱った後
- 清掃作業やゴミ処理を行った後
- 鼻をかんだり、咳やくしゃみをした後
- お金を扱った後
- 休憩から戻った時
- お客様に接する前、またはお客様に触れた後(レジ業務など)
- その他、手が汚れたと感じた時や他の作業に移る時
これらのタイミングを明確にし、ポスター掲示や研修で周知徹底することが重要です。
2. 健康管理と体調不良時の対応
従業員の健康状態は、食品の安全性に直結します。体調不良の従業員が調理や提供に関わることで、病原菌が食品に付着し、食中毒を引き起こすリスクがあります。
- 健康チェックの実施:
- 出勤時の健康チェック(体温測定、症状の有無確認など)を義務付け、記録を残す体制を整えます。厚生労働省の「食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針(ガイドライン)」なども参考に、チェック項目を設けることが望ましいです。
- 下痢、嘔吐、発熱、腹痛、咳などの症状がある場合は、その場で責任者に報告させ、無理な出勤をさせないように徹底します。
- 出勤停止基準の明確化:
- 具体的な症状(例:発熱が37.5℃以上、下痢が1日に複数回など)や感染症(ノロウイルス、O157など)の診断が出た場合の出勤停止期間、医師の診断書の提出、復帰基準などを明確に定めます。
- 皮膚疾患(切り傷、化膿、湿疹など)がある場合は、患部を清潔な防水絆創膏などで完全に覆い、さらにビニール手袋を着用させるなどの対策を講じます。
- 感染症に関する情報共有:
- 家族や同居者に食中毒や感染症の症状がある場合も、事業者に報告させる体制を整えます。
3. 清潔な服装と身だしなみ
清潔な服装や適切な身だしなみは、食品への異物混入や菌の付着を防ぐ上で非常に重要です。
- ユニフォームの清潔保持:
- 清潔なユニフォームを着用させ、毎日交換することを原則とします。
- ユニフォームは専用のものを着用させ、通勤着との区別を明確にします。
- 汚れたユニフォームで調理場に入ることは禁止します。
- 帽子・マスクの着用:
- 調理場では、毛髪が食品に混入するのを防ぐため、帽子やヘアキャップを完全に着用させ、前髪や耳の毛も収納させます。
- 必要に応じて、飛沫による汚染を防ぐためにマスクの着用を義務付けます。
- アクセサリー類の禁止:
- 指輪、ネックレス、ピアス、腕時計などのアクセサリー類は、異物混入のリスクがあるため、調理場や食品に触れる業務を行う際には一切着用を禁止します。
- 爪、毛髪、ひげの管理:
- 爪は短く切り、清潔に保ちます。マニキュアやネイルアートは異物混入や剥がれた際に菌が繁殖するリスクがあるため禁止します。
- ひげは清潔に剃り、マスクなどで覆いきれない場合は、衛生キャップなどで保護します。
- 香水・強い香りの化粧品の制限:
- 食品の風味を損なう可能性や、アレルギーの原因となる可能性があるため、香水や香りの強い化粧品の使用は控えるよう指導します。
4. 定期的な教育と意識向上
これらの衛生管理のルールは、一度伝えて終わりではありません。定期的な教育とチェックを通じて、従業員一人ひとりの食品安全意識を高めることが最も重要です。
- 新人研修: 入社時に必ず食品安全に関する基本ルールを徹底して教育します。
- 定期的な研修: 定期的に食品安全に関する研修を実施し、最新情報の共有やルールの再確認を行います。
- マニュアル・チェックリストの活用: 現場で分かりやすいマニュアルや、日々の業務で確認できるチェックリストを作成し、活用を促します。
- 店舗巡回と指導: エリアマネージャーは定期的に店舗を巡回し、衛生管理の実施状況を確認し、必要に応じて現場で具体的な指導を行います。
従業員の衛生管理は、食品安全の基盤を築く上で欠かせない要素です。エリアマネージャー様が主導し、全店舗でこれらの基本的なルールを徹底することで、食中毒のリスクを大幅に低減し、お客様に安心して食事を楽しんでいただける店舗運営に繋げることができます。日々の継続的な努力と教育が、安全で信頼される飲食店を作り上げる鍵となることをご理解いただければ幸いです。